
この一件で、小野寺も織田もそれぞれの組織に、潜入捜査官やスパイがいることを確信する。
織田「いい犬飼ってるんですね。でも、犬を必ず見つけ出しますよ。」
小野寺「そりゃあ、お互い様だ。」
釈放された織田を見送る小野寺が言葉を交わす。そして、釈放された織田と小野寺は、お互い、組織の中に潜り込んだ犬を見つけることを固く決意するのだった。

小野寺と織田が対峙している後ろで、織田と行動を共にする森屋純(西島秀俊)は、警察官の高山亮介(香川照之)を見かける。数日前、街中で偶然にも出会っていた二人だが、暴力団構成員と警察官というお互いの立場をこのとき初めて知る。ところが、森屋純は織田組の構成員でありながら、実は、警察の潜入捜査官であった。このことは、小野寺以外の警察官は誰も知らない。

6年間も潜入捜査官としてのつらい任務に耐えてきた純だが、長期に渡る潜入捜査の疲労から、少しずつ精神のバランスを崩し始めていた。純は、心の底では、警察への復帰を切望していたが、信頼する上司・小野寺(角野卓造)からの指示もあり、潜入捜査を続けていた。普段は、信頼できる弟分・ヒロシ(伊藤淳史)と同居し、暴力団構成員という「表」の顔の生活を続けていた。そんな純の気持ちが落ち着くのは、精神科医・西田奈緒子(和久井映見)のカウンセリングを受けているときだけだった。本当の自分をさらけ出せる短い時間、純は、次第に奈緒子に安らぎを見出すようになる。

そのころ警察では、高山亮介(香川照之)が上司・菅原警備部長(平田満)から、警察内部の内通者を見つけるよう内部調査の特命任務を受けていた。実は、高山亮介こそが、織田組の内通者であったのだ。しかし、警察の誰もが、その事実を知らない。内通者探しの命令を受けた高山亮介は、警察内部の同僚たちから「身内を疑うつもりか?」と冷たい視線を投げられ、疎んじられる。同時に、高山亮介は織田からも、織田組に潜入した潜入捜査官を密かに見つけ出すように言い渡されていた。

そこで、高山亮介(香川照之)は、先日の麻薬取引に関わった織田組の構成員の履歴書を集めるように織田へ頼む。織田の命令で履歴書を書くことになる純やヒロシたち。その履歴書の束が、密かに織田から高山亮介に手渡される。そして、立ち去った高山亮介の後を、一人の男が密かに追いかけていた。その男は、純だった。しかし、人ごみに紛れ、高山亮介は純の尾行を振り切る。
「誰かが自分の裏の本当の顔を暴こうとしている。」 見えない恐怖に、森屋純も高山亮介もしだいに心が乱れ始めていた・・・。
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